2019年5月5日日曜日

 余剰脂肪でまっしろになるまで栄養ためて膨れあがらせるのは三歳までで十分なのだ。たった六歳の女の子が愛の苦悩とやらでちびちび消費することを、十一歳の男の子が思い遣り派手に昇華させることを知っているのに。
 血圧は腎臓を圧迫する。くたびれた皮袋にはくたびれた唾液をちびちび溜めこんでいくべきなのに。そもそも袋なんて必要あんのか組織は自己増殖するから一部を切り取ってタンクで培養すれば望むだけの機能も成分も生産できよう。何でもかでもバイオと名付けりゃヤの字のつくプロモータ多角化の一部門を僭称することたやすい。
 をちこち垂れこめてくる汚い茶色に錆びついた細やかな水蒸気が揺れて降りてうるさく耳元でぶんぶんするから、もっと分厚い雲の帯をかぶせなければならない。アクマの耳とあしゆび気狂い科学者とやらは愚鈍生真面目典型タイプ。カッコイイのはいつも上手にはずれている人だけど、ほんとに死ぬほど好きになるのはいやんなるほどおイモちゃんなのね。ぺたぺた貼りつけられた沢山の記号は世間じゃプラスの看板ぶってるけどノンノン軟弱ボオイでいいのアナクロ獅子ふぁいたあくちをきわめて罵倒しマイナス要因ばっかりならべたてるのは好きのあかしなのよ。馬鹿げた単純化なんども復活する田舎もん教祖は走り続けることと立ち止まることしか能がなく、正しき弁を熱に浮かされだらだら流し続けて、それでも脂肪味の大好きな信徒たちは追っかけ喚き叫んで保護団体に電話かけまくる。あなたもあなたもあなたもこなたもそなたもソナチネも毎週火曜日が脂肪たっぷり旨くて安いお祭り騒ぎ。接した途端いきなり漏らす呆れるほどの素早さ。
 虚空に向かって開いたこの霧函の内側にはαもβもγも一緒くたに飛び交ってカスケード・シャワー頭上がカーンと抜けてジンジンするほど天井が途方もなく高いのか空気が硫酸銅めいて渇いて澄んで張りつめているのか。最初のぶ~んがアンプで増幅され特大スピーカーの声帯&鼓膜を震わせる。その同じ時刻
 構成を計算するMCは簡略に親しみやすく思い違いも甚だしく飛んでもない通辞つきでアジテータと優しいセンセイの熱っぽさをこめて。
 色には赤と黒しかない。燠火のじくじく燃えるアンタレス蠍かたかたと暗函を揺るがし、幻燈にうつる影法師ひかりの幕に隠れて怠惰な熾天使たちゆらりゆら。
 罅割れが聴こえる。ところどころ破綻して熱い中身が噴き出す。予め定められたサイズの溶鉱炉に配合され、音程の定まらないネイティヴ魔女の坩堝をかきまわす。ひゅんひゅん風切る翼の埃。ちり舞い降りてざばざばの雨が降る龍巻台風サイクロン或いはキング・デイヴの新しきメッセージソングか。
 切なき願い
 ごくナイーヴな欲望の
 津波
 沫
 大潮
 泡立ち
 いくつもの筋になって
 走り
 走り
 まだ止まらない
 すべての塀によじのぼり
 まだ
 まだ
 もっと
 もっと
 右手突き出しうろうろ虚ろな眼を動かして落ち着きのない子も利発煥発ぴりぴり身を細らせる子も、睡眠誘うなまぬるさも決してねむっちゃいない底冷えも、みな目を開けたつもりになって湧きあがるたったひとつの球に融合し際限なく再現なく奔り出る共感にもっとかたく目を瞑るこの同じ時刻。
 地球まるごと布団にくるみ真綿みたいに絞める分厚い雲の層。淡いところ熱いところまだらにゆらいで突ん裂く爆撃機も、カタルシス名告るにはあまりにせつない。

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