2019年6月19日水曜日

恋するキナコ

たとえば
のぼっていくエスカレータで
おりてくるエスカレータに乗っている
素敵な子をチェックする。
ひとりひとり
 あ、この子いいな。
 この子、綺麗な顔だち。
 洗練されてる!
 この子もステキ
 おお!完璧!
JRから地下鉄まであるくまに
地下鉄から職場まであるくまに
すれちがう顔をいちいちチェックする。
ひとりひとり
 わ、可愛い!
 おお、かっこいい!
 地味に端正
 個性的。
 すっごい 繊細!
 おお!かんぺき
ステキな子にばっかり目がいく
綺麗な顔をさがしてあるく
私の眼の
面食い癖はとまらない

ああ
それでも
 どうしてこの子じゃいけないの?
 この子でもよかったやん
 こっちのほうが客観的には
 ずっとイケてるのに
 なんでこっちのほうを
 好きにならなかったの?
すれちがう子
すれちがう子
やっぱり
あの子
ではない。
あの子とちがう
べつの子 なのだ。

あの子の顔はひとつしかなく
それは 綺麗で素敵で申し分ないけど
たぶん 他の子にくらべて 圧倒的に秀でているとか
たくさんのなかで 客観的にナンバーワンとかではなくて
それでも
ひとつしかない。
あの子だけが
私のファンタジー。
いちばん好きなのは
あの子 だけ
そのファンタジーが生身の人間となって
どこかで生きているのが 奇跡である。
いまも どこかで 生きている。
私の いまが すれちがう
この子ではなく
いま おもわず 目の合った
こちらの子でもなく

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