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2023年9月25日月曜日

をさなごころに

たいせつなひとに嘘をついてしまった日の

たいせつなグラスを割ってしまった

むくいや

むくむくと いいわけ いくらでも
いくらでも わきでても なんのやくにもたたぬ
とりかえしのつかない


こんなとりかえしのつかない

を くりかえしながら

たいせつなものを
ひとつ ひとつ こわしていく

むくいや

2023年9月14日木曜日

あけがたの夢で

あけがたの夢で 横向けに寝ていたわたしの口から
花びらのように次から次へとことばがふきでてこぼれおちる
わたしの頬や胸がしわくちゃの茶色の包装紙で 空気をいっぱいふくみ
あたらしいことばたちをふきだして
ああこんなに自由に
ああこんなにたくさんの ことばたちが
そこらじゅうを舞っている

しばらくすると
半睡の夢から意識がすこしずつ覚醒して
ふくらんでいた包装紙を 縛る紐があらわれる
いっぽん にほん …
紐がつぎつぎと掛けられて わたしのからだを縦横にしばり
ことばの ふきだし口もふさぐ
あんなに いっぱいあったのに
あんなに 気ままだったのに
縛られてしまって窮屈に揃えられたことばがいま
今日つかう言葉としてわたしのなかにスタンバイする

ああこれだから
いつもいつもありふれた言葉しか出てこないんだ
縛られた思念 整えられた思考 なにかに号令されて
きょうのわたしのことばも いつもとおなじく
狭いからだのなかに押し込められ
整列させられ
世間に 通りの良い言葉として発せられる

あけがたの幸福な夢は そうしてふっとび
きょうも いつもとおなじ 退屈な ことばの日暮らしがはじまる

それより以前 夜中

熟睡しているわたしのなかでは
真夜中に きっとわたしの下腹あたりにかたいかたまりができ
ことばたちの種が詰まったかたまりは
一晩中かけて胴のなかをとおりぬけ
胸でふくらみ
頬でふくらみ
あんなにも はげしい
ことばの乱舞をひきおこしたのだ

2023年9月13日水曜日

台風LANちゃんが来た日

沖縄を睥睨してった台風6号は
まるでプレデターみたいやったね
肉食爬虫類が鋭角に向きを変えて
獲物を追って走り回ってるみたいやったわ

とかなんとか言うてると
次の台風7号が・・
とLINE友だちから一報
台風チャンネルで確かめると
なるほどその通りで
そこからは
3時間ごとぐらいにLINEが入り
台風の愛称をつかって
LANちゃんいまどこ
LANちゃんどこへ行く
外はいまこんな感じ
LANちゃんどこやぁ・・
その都度台風の位置を確かめると
近畿を直撃するコースになってたり
少し東寄りになってたり
西寄りになってたり
確かめるごとに予想コースがちがってる
しかしどうやら明日上陸は確実かな?
明日はそもそもお盆で仕事がなく
実家に帰るつもりやったけど
早々と「来んでええよ」と電話あり
そのあと映画2本観るつもりやったけど
早々と「明日は休館です」のお知らせメールある。
けっきょく明日は自宅軟禁かい
暴風警報波浪警報大雨警報
特別な警報が出てる地域もある
鉄道調べるとJRは軒並み運休
おお環状線も止まるんかい

目が覚めてまっさきにテレビつけ
まず東海地方の局がレポートしてるのが見えて
さては東寄りのコース行ったかな?
と思うと今度は神戸が映り
どうも淡路島のあたりにいるらしい。
そこからどういうコースを辿っているのかようわからん
アパートの11階のサッシ窓の内は静かなもんで
風の様子も雨の様子もわからない。
静かやな
以前の台風で
サッシを叩きつけるように雨風吹き荒れたときとえらいちがうこと
LINEともだちからのLINEはない

午後3時。そろそろ外に出てもいいかな?
窓の内にいると静かなもんやったけど
扉あけると雨音ざーざーして結構降ってるのがわかった
のでいったんあきらめる。
暴風警報大雨警報もまだ解除になっていない。
午後5時。そろそろいいかな?
扉あけると雨音なく
下界を望めばだいぶ小雨になっている模様。
よし、歩きに出よ!
コロナ禍で仕事もない映画館も開いてないジムもやってない頃
よくそうしてたように
雨の日は雨に濡れない商店街を行ったり来たりで歩数を稼ぐ
歩き始めると
風雨が収まるのを待ちかねていたのか
結構商店街人通りが多い。
お盆でそもそも閉まってる店 台風で閉まってる店を除くと
開いてるのはパチンコ屋カラオケ屋呑み屋のたぐい
みんな居場所が欲しいのだな
天満駅の近くを通りかかると
頭上を電車の音が駆け抜ける
おお環状線が動いてる
しばらく歩いて帰りにまた駅の下を通りかかり
環状線が動いてる

うちに帰ると
昼間音無しだったLINE友だちからLINE
よかったねー大したことなくて
互いの無事を確かめあい
なんせ21号がトラウマになってて
台風と聞くとしばらく前から生きた心地せえへんねん
昨日の頻繁なLINEと
今日の音無しはそれだったか・・
その21号のときは・・の話になる
そうそう今日思い出してたのもそのときのことで
あの日はサッシを雨風が叩きつけて
知り合いのマンションで隔壁が吹っ飛んだ
LINE友だちのトラウマも大風によるものらしい
あの年は大阪地震もあったんやったね
そうそうそっちのほうは堅い地盤のおかげでなんともなかったんやけどね
うちもなんともなかったんやけど
北摂の方がひどかって・・
たぶん何度もした話
台風のあとしばらくして
友人のお連れ合いが亡くなって
震災のかたづけの流れやから
あれは完全に震災関連死やと思うけど・・
友人自身はそれどころやなかったようで・・
たぶん何度も繰り返した話
これからも繰り返す話

2023年8月28日月曜日

FukushimaWaterRelease3日め

果物屋の店先で
今年初めての青蜜柑を見つけた
うれしい
ことに青いのを選んで買う
今どきの青蜜柑は昔と較べで酸っぱくなく
物足りないけど
それでも青いほうが酸っぱみがあるような気がして
青いのを選んで買う
酸っぱいのが好きなんです
このごろは苺なんかもめちゃ甘くなっちゃって
いつかヨーロッパの市場で買った苺が
見た目は日本のと変わらないのに
酸っぱみがきつく野生味もあって
こちらの方がわたしは好みだったな
…てそれはまた別の話
目の前の青蜜柑は高知産

魚屋さんの店先に来て
   鮪の刺身を食いたくなったと
   人間みたいなことを
わたしも思うのだが
ホントは鮪よりハマチの方が好みなのだが
これからさきの日本の漁師さんたちのことを思いやると
心穏やかではいられない
山之口貘氏が
   死んでもよければ
   勝手に食えと
うたった灰かぶりの鮪の灰は
アメリカさんの落としたものだったけど
このたび太平洋を汚しているのは 日本の灰なのだ
そんなギフンにかられつつ
長崎産カンパチの刺身を買う

いつものように
車のかげのない赤信号の交差点を渡ってると
向こう岸にいるおっさんが
「おばはん赤信号やど」
とわたしを指差して言った
わたしは中指を立てたりせず
にっこり笑って通り過ぎた

※引用は山之口貘「鮪に鰯」より

2023年8月25日金曜日

FukushimaWaterReleaseの日に

さいしょの雷鳴が耳にとどいたあと
一瞬だまって一緒にそれを聴いていた
目の前の相手が
「雷ですか?」と言った。
「雷ですね」
ここからは窓が見えないので
外の様子がわからない。
それからまた何度か雷鳴が聞こえた。
部屋の空気がふっと肌寒くなる。
雨音は聞こえないが
雨の降りだす気配
雷も何度も鳴る。
仕事の合間にさっきの相手が
「雨降ってますね」
「うん、そうやね。傘持ってきてる?」
(わたしは晴雨兼用日傘がある)
「いいえ、日傘だけ…」
しばらくすると彼女は
外に出ないといけない。
「その日傘で雨除けになる?」
「…ううん。きっとぐしゃぐしゃになってダメになってしまうと思う」
どこかで雨傘を借りたら…とかなんとか言おうかどうしようかの間に 彼女は席を立つ
「お気をつけて」
わたしはまだしばらく時間がある。
しばらくこの建物の中に居よう。
廊下から外の様子を窺うと
土砂降り
犬猫降り
すごい降り
iPhone見ると
LINE友達から
「(わ)(ー)
 ついにドシャブリ来そう~
 南の空真っ暗 雷ゴロゴロ(thunder)
 雨雲レーダー真っ赤な雲の塊😱」
と絵文字付きで
降り出す直前のメッセージ
ここんとこ大阪ではまとまった雨降らなかったもんね。
外の様子のわかる部屋に移動すると
ますます雨脚強くなってく模様
天気アプリ確かめると
なんと大阪に大雨警報と洪水警報と雷注意報が出てる
いつまでもこの場には居てられない
わたしもあと45分ぐらいで出ないといけないのだが…
「止んでくれ〜」
友だちにその旨LINEすると
「1時間くらいでやむと言うてる」
と情報くれたうえで
「祈ろう」
と祈ってくれる。
あと30分
読んでる本はいまヴェネツィアにたどり着いた
あと20分
ヴェネツィアの聖堂に行く(わたしも行ったな)
あと10分
次はドイツに行くらしい。
LINE友だちは大阪市内の別の区に居て
「こっちは小降りになって雷も遠くなってるんだけどな」
こちらもマシになってきたかな?
あと5分
意を決して席を立つ(小さな決意だこと)
建物の外に出ると
小さな晴雨兼用傘で間に合う程度の降りになっていた
傘無しでずんずん歩いてく人もいる
時折稲光が光る
交差点の手前で雑居ビルの玄関先を借りて少しでも雨をやり過ごした
JRにしようか地下鉄にしよか
少しでも歩く距離を惜しんで地下鉄にした
祈ってくれてたLINE友だちは
「一時的なものかもしれないけど雨は止んだ」と。
「こっちは止んでないけど小雨になってて小さな晴雨兼用傘で大丈夫やった。ご心配ありがとう」
「よかったね!」
絵文字で拍手してくれた。
次の目的地に着き
地上にあがると
もう雨は止んでいた。

それから夜になって仕事終わりになじみの呑み屋に行ってライブ聴いて帰ってくるまでに会う人会う人
「すごい雨でしたね」
とひとしきり。
どこが降っててどこは降ってなくてどれくらい降って雷は鳴ってどれくらい降り続いてどこでいったん止んでまた降り出したか
会う人ごとに把握したよ

家に帰ると
LINE友だちから不思議な写真が届いていた
「不思議な光景だったので…
 ちょうど日の入り
 まだ降ってるのか東のドン曇りの空に建物がスポットライトを浴びて浮き出たようでした🌇」 

なるほど不思議
道には誰も歩いてなくて
空も空気もまだ灰色の世界に
夕暮の日差しだけが黄色く輝いて
道の奥のほうと
両道端のビルの裾より上の側面を照らしている。
黄金色のビルが立体的に浮かびあがり
こちらに迫ってくるようだ
不思議な遠近感

夕立とすれちがった(2)

夕立とすれちがった
閉め切った室内で仕事してたので
外で雨が降ってるのに気づかなかった
建物から外に出ると
道路が濡れていた
濡れた地面の匂いがほわんと立った
ガソリンスタンドの前を通りかかると
ガソリンの匂いがツンときた
マンホールのそばを通りかかると
下水の匂いがむわっときた
けっこう降ったのかな?
でもまだ降り足らないとでもいうように
空気は湿気をふくんでもわっとしてる
時折パラパラっと名残りの雨しずくが落ちてくる
道端の
なんの用をなしてるのかわからない棒の先に
渡した横棒の両端に天秤みたいに風鈴が二個つるしてあって
不機嫌そうにチリチリンと鳴っている
しばらく歩いてると
地面が乾いてきて
乾いたところと濡れたところがまだら模様になってくる
空はまだどよんと曇り模様
むしむし気温も高い
とおもうとまもなく
またバラバラっと雨が降ってきた
水溜りに水の輪が重なってパラパラっと散った
けっこう降ってくる
あわてて傘をさす人(わたしをふくむ)
手に持ってるなにか(かばんとか本とか)を頭にやる人
雨の中を信号待ちするのが嫌なので
いったん地下にもぐって交差点の向こう側に抜けることにする
地上に上がるとそのまま濡れない道を通って
スーパーに入った
暑いなか歩いた身体をいっとき冷やすため
スーパーも心得たもんで
キンキンに冷房を効かせている
スーパーを通り抜けて外に出ると
もう雨はやんでいた
青空さえちらりと見える
日差しさえ時折ちらりとさしてくる
通り一本隔てた
べつのスーパーに寄って
トマト一盛り480円也と特売コーナーの竹輪20%引を買った
うちに帰り着くとすぐシャワーをあびた
竹輪を齧って缶ビールをあけた
窓から外を見ると青空と白い雲がみえた
夕立とすれちがった

それからしばらくしてまた家を出ると
まだ明るくて青みの残る空に
三日月以上半月未満の月が綺麗だった


電車に乗ってiPhoneでこれ打ってると
隣に立ってる人が
ライトがついてるよと
身振りで教えてくれた


夕立とすれちがった

神戸から帰る途中の電車で
夙川あたりでバラバラバラっと大きな音がして
雨粒が車体を叩きつけているのがわかった
「わっ!雨」と思って目をあげて窓を見ると
雨粒がたくさん車窓にあたってながれていくのが見えた
隣に座ってる人もわたしと
同じ方向を見やっていた
だけどそれはたったいっときで
電車が進んでくと
すぐ雨音も雨粒もなくなって
十三に着く頃にはすっかり晴れていた
地元に着くと地面が濡れた形跡があり
小さな水溜りがそこここにできていて
プラスチックの庇から水がぽたぽた落ちている
ところがあった
夕立とすれちがった

あとで聞けば
西宮に住んでる友人は雷付きで結構大降りだったと
大阪に住んでる友人は「おしめり程度だった」と
いうことです。

2020年9月21日月曜日

焦燥

そう

しょう

そう

焦燥

焦燥に駆られる
左から押され
右から圧され
下から突きあげられ
斜め上からつつかれ
ゆらゆらあぶなっかしく
平静を保つのがむずかしい
おまえは
おまえは
いまごろ
なにを
いくつもの 指弾と
もやもやした
ことばが ぷつぷつ
不穏な地面から 芽をだし
むこうの空から こちらへと
画が ぬっと ぬっと どんと
幾重もの 強迫と
いくまいもの 画が
視界をさえぎって たちふさがる
ゆらゆらひるがえり 立ち処の一点を おびやかし
均衡を保つのがむずかしい
しがみつくのが むずかしい

2020年5月20日水曜日

さんぽ

わたしの透明な死体が幾重にも折り重なっている
その地点を
三度 通り過ぎた
十八年ぶりの春

一度めは おずおずと
二度めは 確信をもって  踏みしめる
三度めは ほぼ なにも考えず

それで終わったわけではない
かずかずの透明な死体を
葬ったわけではないが

いつ ほんものの 死体になってもおかしくなかった この春に
わたしは 生きている
生きている にんげんとして ここを踏んでいる
奇跡
奇跡のような
軌跡

川面をとおりすぎる舟の軌跡があり
川面に跳ねる魚の水音とすがたがあって
釣り人らは 若いのと年老いたのとが マスクなしでしゃべっている。
笑っている。

とおりすぎる こどもがいて
とおりすぎる 老人がいて
すれちがう ジョガーがいる。老いも若きも女も男も
ふみしめる さくさくと この年に
この 残酷な春に

無数の透明な死体と
(すごく多いけれど)有数の 具象の死体とが
どこともない 無限の 場所で
(すごく遠いけれど)ごくちかくの 有限の 場所で
つぎつぎ 折り重なっては くずおれる
この 過酷な年に

2020年4月4日土曜日

蟻走

帰らなければ
帰らなければ
帰らなければ
でも どこへ?

宿主の頭蓋骨の内側をめちゃくちゃに走りまわっているだけの蟻さながらに
あせりまくってはいるのだけれど どこへなにをどうすればよいのかわからない。
ぢめんにはつぷつぷつぷつぷつぷ無数の孔があいて足をとり 剣呑クラック縦横にはしって 腹まですっぽり嵌まってしまう
いっそ 其処から外界へ抜けられればよいのに
ぬけるに十分な大きさ だけは ないのだ。

ぴーーーごおおーーと音がして
其れ其こすぐ 高架をへだてた向こう側に環状線が発着する。ながい頭頂だけがみえる銀色の電車がなんぼんもなんぼんも目の前を走っていく あの駅に
はいるには まず正規の手続きを経てここから出なければならない。とさ
むこうがわに わたらなければならない。

距離的に最も近いとはいえ無駄無理ムラな内壁をつたってはしりまくるだけの危険を漸く察し 算段するフェイズをひとつさかのぼって チェックイン/アウトのために建設されたとの名を負う ビルヂングにもどる と
ここでもやはり蟻さながらに 上から下へ 下から上へと梯子をつたって走りまわること余儀なくされるのだ。いちばん下層のバァには わたくしにむやみな悪意をいだく女将がいて
みつからぬうちに とっとと去なねばならぬ。(ばぁさん確信に充ちてカラオケ曲をえらび終え、こちらが身を匿す数舜のちにふりかえる。こっちゃもう何ゆえの悪意であったかすら憶えていないのに)

最上階から何層か下までは見晴らしがよく液晶挟んだガラスの薄膜をへだててむこうのくうかんを滑りぬけていく電車がまぢかにくっきりみえる だけに そっちへあくがれる精神を逆撫でする。病篤し オフィスにはだれもいなくて 空の書類どころか窓を開けるカギさえ見つからぬ。闇がおとずれれば 磁界におとなしく したごう液晶のつぶつぶの配列かわって もとのもく闇 阿弥陀の唐変 木鐸止み 網の闇。(ふらんす語でともだちを意味するバァの名)

中階の注解の仲介の宙界の忠獪な管理人は どんな申請がやってきても「手続きを拒否する」ことのみ責務とこころえているらしいのだが かれの目をぬすんで窓枠に攀登り 警備人らにみつからぬよう ルーフテラスの補助線を越えることだけが
ゆいいつの越境の手段だと おしえられ
物干棒<─>線の定義をわすれぬよう 入念に
あらんかぎりの速度加速度でダッシュ!奪取を試みるのであるが──(脱種)
そこは 蟻の 身の 哀しさ 身の 数倍の 距離をはしる速度が 可能だ と 蟻つかいらは 褒めて くれても
そんなもん 屎のやくにも たたぬ
…チキコンチキコンチキコンチキコン………
だに
あっさり
捻り潰され

もういちど 幽界をさまよいありく羽目になるのだ。
宿主が
痒がっている。
ぶっとい蜂に刺されたように 二の腕が筋肉まるごとひとつぶんのかたちに腫れあがり わたくしが むちゃくちゃに はしりぬけていく感覚がするらしい。
にんげんは 生物の ヒトの 臭いがするからと ちかづくのもいやだ
おのれとて ヒトの 臭気を発するから だれにちかづいて さとられるのもいやだ
と いたがっても膚にふれることをいやがり
ぎりぎりぎり 蟻り蟻り蟻り と
艤装を擬装する蟻走のふゆに
じりじりじりじりじりジリじりジリと まなつの鈴むしの 鳴くことよ

2020年3月24日火曜日

微睡

だれかがぼくの名を呼んでいる。
ぼくが名づけられる以前の名で呼んでいる。
だけどぼくはどうやってそれをわかればいいのだろう?

覚醒と睡眠のあいだの階の要衝要衝に
交通案内をしてくれるおばさんが立っていて
わずかなチップと引き換えに夢のチケットをくれる。

長い夢を存分に愉しんでからもっと深い階に降りていくのもいいし
ごく短いイマージュを楽しんで、またすぐべつのおばさんを探しに行ってもいい。

夢の各層には大きなまるい浅い穴が水玉模様のようにぽつぽつと開いていて
ぼくらはそこをとおって睡気の重力に曵かれ
ゆっくりとだんだん深い階へと降りていくのだ。

今夜は穴を避けてごく浅い層をとびまわり
あたらしくみつけたおばさんからつぎつぎとチケットをもらって
気の向くままに点々とイマージュを渡り歩いてみる。

六角形のかざぐるま
ソフトクリームの大山椒魚
一角獣のひづめ
龍の子のこゆび
妻のあしゆび
月のきざはし
霜の刃
あまいひやむぎ
秋冬仕様にツイードを着込んだ雀
生き延びる実感
ぽろぽろこぼれるとうもろこしぱんのくず
降りしきる豆ランプの光のあまだれ
あまずっぱい観覧車に
シナモンの香りのする回転木馬
仔馬のたてがみ
水の龍のまぶたにふれる

浅い階にいるおばさんたちはみんなとても美人でセクシー。
黄色や青やピンクのミニドレスをきらきらきらめかせて
50年代ふうにカールしたヘアに色とりどりの流星や恒星や星雲をいっぱいつけて
惜しみなく笑顔を呉れる。
チケットをわたしてくれる白い手がひやっこくふれるだけで
ぼくはドキドキしてしまう。

でも どこかよそから
たぶん どこか奥のほうから
だれかがぼくの名を呼んでいる。
ぼくが名づけられる以前の名で呼んでいる。
だけどぼくはどうやってそれをわかればいいのだろう?

まぁわからなくてもいいや
気づかなくても仕方がないやと
くちのなかでいいわけしながら
(内心微かに仮借をおぼえながら)
ぼくはイマージュの浅瀬をぴょんぴょん跳んで渉るのだ。

2020年2月27日木曜日

半分だけ立て掛けてある/あるかな はるかな

あるかな
はるかな
アルカナ
あるか 
歩かな 
歩かな 
遥かな 
春かな

半分だけ立て掛けてあるよそごとにカチっと欲望をかぎり
舗道から眺めて後ろ半分だけ見えない杉の板に触れたくても触れずにおき   
第2第3ステージへとうつっていく中途半端な温度にて
それから2、3歩あとじさる蜥蜴と人間の体温を同じうする気温にて     
求心状の視点をそれそこの半径1.5cmの円に万遍無く集中すると
キャメラのファインダーにピント合わせの小さな丸い点をさぐりながら    
アウトプットは半径33.3cmの半球型の内側に遠心状に展開する
魚眼様に地球をもっとひろくまるく査収すべしと発言する          
捨象する照射の収縮膨脹は徐々に規模そのものを拡大して
バッテリー喰うストロボの発光するしないはだんだんジリジリいらいらしてきて
この序破急に終局はあるかないか
変節漢の怒鳴り声に週末は台無しかどうか                 
週末という概念そのものがあってよいか否か
終末という休暇そのものにどこへ行くか田舎                
  射ぬか
  犬か

アロンジ   ゆこう     
アレグレット はるかに    
アヴィ    えいえんに   
アヴォワール つよいいしと  
アンタンシテ きょうどをもって
アンタンドゥ りょうかい?  
アヴァントゥ なによりも   
アヴァン   さきに     
トゥ     すべては    
コモンス   ここで     
イシ     はじまる    

すべては ここで はじまる
ici

意志

緊張のあまり泣き出してしまうこどもは
訳知らぬ断絶などものともしない綜合は
童児に優しい水の音に思いを馳せている
同時に不可欠な保護観察を取寄せている
ガラス窓に青いトラックが反射していく
鳥瞰視界に最小限の視差を示唆していく
やすがれにはらはら花びらが散るとなく
ほとほと厳密な概念操作も空しくとなく

ちるとなく むなしくとなく
やすがれに ほとほと   
こだまする        
  居ぬか 

縊死の 
遺志  
医師らの
石   
石の上にも三年
 …とか

往ぬるか

往の

2020年2月3日月曜日

抵裂き難い抗

発火する家
ゆっくり回転しながらしゅうしゅうと炎を噴き上げる。
あの土台のあたりに火薬が仕込まれていたか
それが回転ステージのうえに載せられていたか

跡地のむこうがわは有名な庭園
こちらがわは再開発となる
とりあえず
古着屋ゲー血ム屋掘屋台らの簡易ガレージ店舗が
わいのわいの
軒をつらねて
黄色ジャンパーのにいちゃんらが
コークな茶封筒どを堂々と売っている。

層にかさな死期を女性職員知らせる文化施設
てらてらな黒にグレーのキャ避け難いリアスーツの細身をかためた
男子職員が案裂き難い内する
抵抗
抵熱い抗
耐え抵抗難い
抵愛着抗
の短髪のちに最上死神は階へ

階層を請求書を配達する移る
傾斜のと急を告げ鋭いめつきのるんでもなく緩い
エスカ眉毛のうすいレータ

一気に三層をつ分裂者の手紙らねている
花や樹や種子を撒きちらす草やつめこんだ黒いかばん鳥の標本の束

てっぺんに
曖昧な三角形状のなん誤配物の束をにもない
コンク誰かが勝手に手配したリートの屋上があって
周囲は足首ほど悪意の高さの柵でかこってある。

風が強いから危険です。
吹き飛ばさ狂おしきれて落ちてしまうかもしれませんよ
と職員くんがしきりに止めるのもきかず
折角ここまできたのだから
いちおうは歩い欄干から零れおちるてみようと
危ない端っこをえらんであるく
それでも
エッジから微妙に安全な距離はたもっている
つもり
でも
たぶん風が吹けば無効な距離だ。

彼がはらはらと 内側でみまもるうちに
ゆっくりと ゆっくりと ひとめぐり
するあいだ ついに風は吹かず
無事にもどることができる。
(むしろ風をのぞんでいたのかしらん?)

なんだ関か平和だ係ねぇと
むこうがわの庭園の入り口にたつ
レスト棄てがたいランの灯のにぎやかにともるのをみて

簡易店舗の涸れる陽こちらがわも
1ヵ月半もたたぬまに
愛抵抗着
なにやら変なかたちのビ耐えがたいルが立ち並ぶのだろうと
さしむける
うつそみの

2020年1月20日月曜日

たからくじ

だから
くじ
くじく
くじる
しくじる
じりり

かれはわたくしの冷凍庫に小函を蔵い忘れてかえる

じる
じるれ

わたくしのトイレットの小棚に懐中時計を置き忘れてかえる

ねやのひまに たがいちがいに長短のことなる糸くずを捨て忘れてかえる

境界線をさぁっと引いて すぐ削除する。
境界線をさぁっと引いて すぐ削除する。

べつの境界線をさぁっと引いて すぐ削除する。
またべつの境界線がさぁっと引かれて またすぐ削除される。

線を引いて 削除
線を引いて 削除

ふわふわに交差して糸屑のようになった線の残骸が
場にない場につもりつもって糸玉ガラクタのやまのようになり
その引力で 周囲をさらにおおくの 糸のかけらが旋回している。
指でつまめば たちまち消える。

ある主体は マウスの線でさぁっと描くだろうし
ある主体は キーボードを一個一個たしかめながら叩くかもしれない。
てんてん ときとき ながいじかんをかけて 彫琢し
ていねいに 細心に ちゅういぶかく しつらえたものほど
すわぁぁぁぁぁっと 豪快に削除されていく。

1999年1月1日午前1時27分頃 エレベータのなかで
酒酵素にあわさったどぐさい息とよれよれに高湿度おびた体温をまともにふきかけられる位置にいながら
われかんせずと(あるいはそれこそこころよいかのように)
幾枚もの布にくるまれてすとんと落ちるように抱かれて すやすや睡っている
ちいさないきもの
に遭遇する。

| なぐりつけるように 地におとせば すぐしぬだろう
| しぬかもしれない
| しんだら それなりに かなしんでくれるひとびとがいるだろう
| それなりに かなしんでくれないひとびともいるだろう
| (そちらのほうが とうぜん おおかろう)
| だから いつでも しんでもよい のだと
| みえぬものに あくがれるように たのしげに
| さんざぼこぼこにされた とうめいにんげんのたましいは
| つぶやくのである
| しょーがねーな とめてなんかやらねーからと
♪たのしげに うけこたえてみる やる

 りながら
こんなのはまちがっていると つよく おもう

ラヴさえぴりぴりりとはぎとってしまえば かんたん
という 公式見解も もちろんあやまっていると おもう

べたべたのラヴシャワーの視線に曝された素肌は
ねとねとになるごと 粉をふいたようにすべすべなめらかで
化粧している ほかの身体パーツよりも もっと化粧をほどこされている のだが
なんら防禦的 やくわりをはたさず
かえって ぱぱぱぱっと指圧されるとすぐ
へにょりんこんとへこんで とぽとぽにくたびれてしまう
まいなすの 傷つきやすさ 強度の欠如 欠如の強度

もっとつるつるにしあげて 汁気を剥奪すれば おはだの張りは保たれるかもしれない という
わけにもいかないんだな これが

うしろざまに
ろざまに
さまに
まさに
まに
むけに
ほれ剥がせ ほれきえろ ほれなませ ほれとのせ
!hola! と hala
いって 消えろ て・きえろ te quiero quienes? quiera quienesquiera

2019年12月12日木曜日

さ・迷う

まちなかで迷うのはなにかとたやすい
どこへ向いているのかわからなくても
いま向いている方向へどんどん歩くと
いずれ幹線道路か交差点や線路や駅や
大きなビルやショッピングセンターや
公共施設や団地工場河川寺社のたぐい
とにかく徴になるところにぶちあたる
そこでじぶんの位置を確かめればよい
歩く時間を惜しむのならしかたないが
杳い山の深い森の奥へ迷い入ることも
おなじ場所を堂々めぐりめぐることも
可能性は尠いのだから気楽に歩くのだ

通行人をつかまえてわたしはどちらへ
向かってあるいていますかとたずねて
みるのもよいしバスの標識を見るのも
よい適当にバスに乗ってみるのもよい
飛んでもないところに連れていかれた
ところでせいぜいまちのはずれの車庫
ぐらいなものバス会社が此の世の外か
ら乗り入れているなんてことはないの
だから安心していてよろしそりゃいち
ばん確かなのはタクシーを拾うことだ
けどお金もかかるしつまんないじゃな
い?ゆっくりさ迷いたい気持ちと早く
目的地に着きたい焦りどこへ着くのだ
ろうかという不安と夢想どこへも着か
ないかもしれないという宙づりどこか
へは着くだろうという根拠の無い楽観

道傍に花があって
脇に鳥がいて
子供が遊んでいて
粗大ゴミがころがっていても
目もくれないでもいいし
目くばせをくれてもいい
美いものがとおりかかっても
みにくいものがたちさわいでも
目をとめてもいいし
目をふせてもいい
だれかと喋ってもいいし
独りで呟いてもいい
音楽を聴くのもいい
本をみるのもいい
車がくれば避ければいい
ひったくりに遭えば叫べばいい

雨が降っても
夜になっても
おなかがすいても
おしっこがしたくなっても
悠悠となにもしないでもいいし
慌ててコンビニを捜すのもいい
喫茶店にはいるのもいい
誰かに電話するのもいい

ただ道をいそぐ
ただ未知を急く
ただのうごきに
なってもいいし
止まるのもよい
やめるのもよい
やめぬのもよい
引き返すもよし
やり直すもよし
終りはなくても
終りがあつても
嘉いではないか

寓話でなく
具象の街を
歩きたまへ
迷ひたまへ

2019年12月7日土曜日

かたつむりのおはなし(Go Go Slow)

かたつむりのしっぽ
かたつむりのしっぱい
かたつむりのつめ
かたつむりの鉄道
かたつむりの航海
かたつむりの後悔
かたつむりの軌跡
かたつむりの刑務所
かたつむりの保釈金
かたつむりの嘆き
かたつむりのバケツ
かたつむりの聖杯

聖なる欲望を
享けるさかづき。塩化ヴィニルよりも地球に優しいという(嘘の噂の)ポリエチレンテレフタートのシートをこまかい四辺形に切り分け、地下鉄の背後の壁にぺたぺたと隙間なく貼り付けていく
君の
不可思議な動機。
じつは世界はそれほど奥行きなく厚みなくぺらぺらの乾いたモザイクの書き割りなのだが、ポリエチレンテレフタートにお手紙を持たせておつかいにやるそこには誰かいるのかそこにはストロークを要求するべつのポリエチレンテレフタートのモザイクの貼りついた阿呆がいて船酔いブレイクダウンの指示を出す
某の
みえすいた忖度。
やはり陽気な電子が陰気な電子の振る舞いを拒絶するかのように
跋扈する跛行する跛の(差別用語をのこらず排斥した辞書の)
舞い舞い
でんでん
無視する
片目
隻眼の

かたつむりのヴェール

かたつむりのビール
かたつむりの梱包
かたつむりの販売
かたつむりの谷間
かたつむりのそよ風
かたつむりのおはなし
かたつむりのおすそわけ

おそく
おそく
かたつむりのおてがみで頂戴ナ。
かたつむりのおさそいはとどかないから。

2019年12月1日日曜日

劣性遺伝子

左足のかかとがほんのすこし深めに砂にめりこむようなリズムでそのうしろすがたはゆったりとあしをはこぶのである。きびすとかかと きびすとかかと」

頭蓋骨のかたちが うしろからみているだけで 掌ての ひらで覆いつつめるがごとくさわっているような感触あってよくわかる うしろあたまが微妙にがくがくゆれて ぼんのくぼが宙にうかぶ 吹く あそび球のようにぷくぷくへこんだり膨らんだり浮かんだり沈んだりするようにみ 。細めの肩から流れ落ちる背中の大儀そうに めにみえぬ空気のふとんの層いちまいしょって腰のあたりでひといきれ ほっと
 ぽっとくぼむまでに長いこと。そらとちゅう 宙とそら」

ゆるゆるとつっとりもっとり ......... かれの吐き出していることばことば断片ごとに引き伸ばされて、ぷーくぷーくふきだしの泡に包まれて頭上の空に消えていく。そらとくう 腔とそら」
。。。そらにあいた 孔

(わがみがくるしか
(おのれがつらか
(  なかなか
(いかさま
(うとかもん
(とつ おいつ

ふっと気づくと
そういうひとが左にまたひとり
右にふたり さんにん
左にまた よにん
ごにん ろくにん ....................
と殖えて みな いちように ほそい肩をして
らんぼうに虎刈りにされた まるい頭蓋をして
背の高い低いはあっても どうように つるんと肉の乗っていない皮膚だけの背中をして おとこかおんなか判らず
判然とせず決然となく おなじように かかとを かるく地にめりこませながら 歩をすすめている。

よにん ろくにん
よにん しちにん
はちにん よにん
正確に数えるわけでもない かれらと同調する歩幅とおなじ拍子でくりかえしくりかえす声が いつしか節になり よそごとのように ブラウン管の裏手 柔毛(にこげ)に放射された光のように 表面一枚へだてて距離を詰めることができない。みそなわし みそなえて 。おもてとひょう 面」

そういえば青い縞のパジャマの横並ぶすがたがいつかどこか此処ではない彼処(かしこ)ど処かで見た絶滅収容所へ向かう囚人たちの列に似ていたのかもしれない。せんせえ!に告げると満たされぬ こころの飢ゑとロマンティクな修辞もて笑い飛ばされるのがおちてところか。ふん!どこ何いずこ」 ふんとくそ」

かもしれぬ。かもしれる。かもしれた。劣性遺伝子裂性の列列列........。 ...列たて横列たてひとたび
しかるべき薬品スポイド一滴たらすと そこからまたたくまにアメーバ様のしみほのほとひろがりとろんとろんとろけて坂をころがりおちていくのであつた。
一坤の賽神のひとこえのようにかたぶけるかたぶきに みなとけるみのうえ。 縦立て楯 よ」

(.....やく たれか 
(たれか がみをてろおてくれるか
(がみを
(な がみを
(わ がみを
(  わがいを
(     わああいいを........

...おてくれるか? と イントネーションで判る 懇願でなく きつい命令でなく 切なる請願でなく 要請でなく ....

彼がみをのぞきこんで しかばねきけん/ここより落つるな の看板をわらって みおろしとる。たれも落ちたくて落つるものなどいやせんにて。さきから しかばねになろうかばねは おるなかねて。ふぜんにて いっつのまにか さきほどのれつびとららがぐるりとわになてはねばねを

構成しておるのがみえとおる ずら がらっとみわたすと じぃ っちょうっこうつとみてふよ。


...それはおとろしいまなざしで

2019年11月22日金曜日

トラブルトラヴェル

いつもすでに出発している此処をはなれて目的地はさだかではなく路上にあり迂回し迂路うろしながら通過列車やりすごシナハンおはなしをかたりはじめるには場所を横断しなければならない行かなければならない きつく締めてそこに県境のひろい河がありわたしたちは横切らなければならない よく似たコースを辿っても経験上浅瀬をしっている案内人がいていつものルートではない そのつどあたらしくルーチンワークのように退屈な渡りの儀式 一級河川たて札のむこう岸よその県には県の名を付したぴかぴかの建物がありナントカミュージアムとなづけられて建設中事業主体どこどこ責任者だれそれなに県ぺこ市ぽこ町岐阜蝶カップ事業費数億円開館予定2001年春小春日和見お菓子の看板アイドルが微笑みよく似た計画はあっても其たてものはふるくから其処にある旧聖なんたら会不可能なミッション病院にもとづくものであるからこそユニックなのだと元型がなければ詰まらない時代なのだと謂い だからかんぜんには壊さないむてきの煉瓦の剥がれ落ちる頑強な密閉度の高い風のとおりぬける 霊のはしりぬける魂の滞留する脱け道の分岐する無数の水路が浸みこんでいくその屋に今夜の宿を据えてあとさきは考えぬ たまたま夕食をともにしてどこから来たのかとスタッフに尋ねると吉田とな吉田でわかんない?そんな地名が南紀にあったのかきっとあったのだろうなんせ熊野だもん海のそばだか山の奥だかわかりゃしない下僕を寄越して電報を打たせる気が利かない電話がつうじないからこそ情報記録ぽんぽこりん装置送信そうしているのにチップもないくせにエラソーに水泳ぱんついっちょでどうして小銭が所有できよう一寸貸してよ厭よたとえ1セントだっていやだわいいじゃないかダーリンafter allたった50セントのことだろスマイルが呼んでんよ 待ってんよ出発してんだからたどりつかないといかんのさっして頂戴この旅を やめるわけにはいかないのぞくわけにはいかないかたりはじめる以前に帰途についてはならぬ沙汰やみにどこへかわからぬやみのよむにた闇の読むに似た病みのやまいや舞いしかど あらゆるコードが連関をもって意味のファントム肉体を構成してしまう段階を経ていちど試験管撹拌し混乱イニング裏からふたたび整列しわたしとまったくおなじ遺伝子をもつクローンが(此処にいる)わたしより少し遅れて彼の地で成長していることを知り対手にはひそかにしておもむくことにする ものかげよりガラスごしにうかがえば疾っくに細胞ではないかのじょは英語をあやつり(そりゃそーだ)わたしよりいくらか年下で(それもそーだ)なにかをコーディネートしがちなおふぃすをけんめいにやっているらしい苦手なのにな渉外障碍ひとづきあいは遺伝子に記載されていないのか いやかのじょもほんらいみにあわぬことをけんめいにやっているのだよ賢明にもよなよなよなよ仕事それが目的ではない わたしとかのじょのほかにもうひとり いるはずなのだ いるはずのない このよのものではない 精霊が ひとり そのこどもに遭わなければ 旅は終えられない ひとつのまるはない 一卵性双生児とてそれほど似ているものではないのだから こどもが どちらに似ているのかは本来どうでもいいことなのだが どーでもいいよにみえてじつは どーでもいくない むずかしいむずかる幼児コロコロかーとに載せてひいてやる ひいてもらう ひいてもらうのかひいてやるのかたぶんふたりのどちらが表になるのか裏になるのか双方髪が漆黒ベタ墨色だから並んで立っていると折り重なってひとりにみえる桎梏なさげにうっちゃりノンシャランに擦れ違いざまつぶやくHi!にHow are you doing?をつけくわえ いいからちったぁこんじょすえてけつあげろうごきはじめろ お尻かっちんリセットしてもいちどスタート スロウから徐々に加速せよ てんすうは勘定すなよ特質点のみに集中せよ 持ち駒に ならないカードはいくつある?
再見をきめる ために        離陸せよ
いまは    時の渦の ただなかにある

2019年11月18日月曜日

ちびこちびこ

とんとん一段降りるごとに肩叩かれる。死神に
とんとんとん踊り場をぐるっとまわれば殴られる。待ちかまえていた悪意に
とんとんとんとん急いで降りると足掬(すく)われる。悪戯小鬼に
とんとんとんとんとん
落ちれば5秒とかからない。
落ちるかもしれない と
落ちるに決まってる と
落ちることを知っている と
ああやはり 落ちることはわかっていた と
落下の蓋然性をめぐって
めぐりめぐるうち 知っていることを知らぬふりして
背後からつけてきている死神と
壁に塗りこめられた悪意と
段差に仕込まれている小鬼と
それでも我慢してつきあっていこうとするのは

ぶわぁぁぁっと黄色い土埃の舞い上がる分厚い あなたの匂いのカーテンの
襞につつまれ
心地良く血しぶきのスローモーションに酔い痴れて
ここがここ
ここしかないここ
いまがいま
いましかないいま
を確かめるためと 嘯(うそぶ)きながら
ときどきは不平を洩らしたくもなる。

あたまを撫でてくれ

しつこくしつこく要求したくもなる。
たぶんこの詰問口調があなたをうんざりさせるだろうと
なぜ撫でてくれないのか
しか囁くことのできないわたしを
それでも我慢して やしなっていこうとするのは

2019年11月14日木曜日

瀧のように落ちる

夜をついで
夜をぬって
夜をぬけて
逃げ落ちていく
無名の黒いタクシーに乗って 無貌の運転手の無言に身をゆだね

ふたり 息をつめて
それぞれの ふところにひみつを いだき
こころもとなく たがいの ひみつを まさぐりあって
なぜ わりなく ふりかえることなく
みつめあうことなく
それぞれの 虚空を 瞠り(みはり)

ネオンの街から くらい街灯のともる細い道にはいり
くねくね 坂をのぼったり おりたり
道沿いに 無音の木の家の 無関心な視線を意識し おびえながら
いくつもの 古い街街をついで にげのびていく

中世の街の広場まで来たところで 水を汲みにいった運転手におきざりにされ
鉄の車体に夜の冷気からさえぎられ護られ ふとあいまの時刻をかぞえながら
静寂(しじま)にくりかえされるエンジン音に耳をすませる

広場の中心に据えられた インスタレーション
「ヴェルナー・ヘルツォーク氏のアンギラス」
怪獣の着ぐるみから すがたをのぞかせる俳優の顔かたち からだつきから それが
クラウス・キンスキー氏演じるものであることが知れる
昼間はここで 生徒らが弁当をひろげ
おのおの 制作に 精を出すのであろう
白い布のしたに それぞれのポーズを刻印して

ダストシュートをつかって一気に堕ちれば
敵をあざむくことができようと
先師 ともども 説得しようとするのだが
かのじょが 肯んじない
怖いから というより 死ぬかもしれない その蓋然性のゆえに
ねむりにおちたまま その夢のままに めざめることがない なんていや
と 彼女は ことばは合理的に 態度は おさなごのように
頑なに その術を採るのを いやがるのである
仕方がない。 いいでしょう
そのまま 車で降りましょう 立体駐車場の外郭をつたって
下の スクランブル交差点まで おりれば
はるか 西に みわたせるでしょう 入り陽が
そこで 待ち構えて いましょう 味方が

あなたがたの味方が 敵が
いつのまに できたのか
ふたり あやうさに ためいきして
てわたされた 武器をためつすがめつ 一眼のキャメラである
これでshoot せよというのだ
操作すら知らぬのに

てきせつな言葉が捜せなくなったのなら さっさとそこで全面降伏すべきなのだ
わかっていながら だれも口にしない
わずかに 未来に のぞみをつなぎ 破滅のときを 一縷あと一縷と わずかずつ先延ばしにしていく

そこをなんとか きりぬけ
ふたたび 黒いタクシーと落ち合って
夜を 徹して おちのびていく

西へ
北へ
また西へ
西へ
赤黒い 火山の火が ともる地へ
灰色の地を割いて 白い沫をたてながら 巨大な瀑布が おちる地へ
瀧の ながれおちる 表面の透明を ゆっくり斜め上から下へとクレーンにのって移動するキャメラに捉え
せめかかる 光の弾々に
ふたり ふたたび せつなさに
身をよせあう

瀧のように落ちかかる彼女の 肩