あけがたの夢で 横向けに寝ていたわたしの口から
花びらのように次から次へとことばがふきでてこぼれおちる
わたしの頬や胸がしわくちゃの茶色の包装紙で 空気をいっぱいふくみ
あたらしいことばたちをふきだして
ああこんなに自由に
ああこんなにたくさんの ことばたちが
そこらじゅうを舞っている
しばらくすると
半睡の夢から意識がすこしずつ覚醒して
ふくらんでいた包装紙を 縛る紐があらわれる
いっぽん にほん …
紐がつぎつぎと掛けられて わたしのからだを縦横にしばり
ことばの ふきだし口もふさぐ
あんなに いっぱいあったのに
あんなに 気ままだったのに
縛られてしまって窮屈に揃えられたことばがいま
今日つかう言葉としてわたしのなかにスタンバイする
ああこれだから
いつもいつもありふれた言葉しか出てこないんだ
縛られた思念 整えられた思考 なにかに号令されて
きょうのわたしのことばも いつもとおなじく
狭いからだのなかに押し込められ
整列させられ
世間に 通りの良い言葉として発せられる
あけがたの幸福な夢は そうしてふっとび
きょうも いつもとおなじ 退屈な ことばの日暮らしがはじまる
それより以前 夜中
熟睡しているわたしのなかでは
真夜中に きっとわたしの下腹あたりにかたいかたまりができ
ことばたちの種が詰まったかたまりは
一晩中かけて胴のなかをとおりぬけ
胸でふくらみ
頬でふくらみ
あんなにも はげしい
ことばの乱舞をひきおこしたのだ
2023年9月14日木曜日
あけがたの夢で
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