2019年12月1日日曜日

劣性遺伝子

左足のかかとがほんのすこし深めに砂にめりこむようなリズムでそのうしろすがたはゆったりとあしをはこぶのである。きびすとかかと きびすとかかと」

頭蓋骨のかたちが うしろからみているだけで 掌ての ひらで覆いつつめるがごとくさわっているような感触あってよくわかる うしろあたまが微妙にがくがくゆれて ぼんのくぼが宙にうかぶ 吹く あそび球のようにぷくぷくへこんだり膨らんだり浮かんだり沈んだりするようにみ 。細めの肩から流れ落ちる背中の大儀そうに めにみえぬ空気のふとんの層いちまいしょって腰のあたりでひといきれ ほっと
 ぽっとくぼむまでに長いこと。そらとちゅう 宙とそら」

ゆるゆるとつっとりもっとり ......... かれの吐き出していることばことば断片ごとに引き伸ばされて、ぷーくぷーくふきだしの泡に包まれて頭上の空に消えていく。そらとくう 腔とそら」
。。。そらにあいた 孔

(わがみがくるしか
(おのれがつらか
(  なかなか
(いかさま
(うとかもん
(とつ おいつ

ふっと気づくと
そういうひとが左にまたひとり
右にふたり さんにん
左にまた よにん
ごにん ろくにん ....................
と殖えて みな いちように ほそい肩をして
らんぼうに虎刈りにされた まるい頭蓋をして
背の高い低いはあっても どうように つるんと肉の乗っていない皮膚だけの背中をして おとこかおんなか判らず
判然とせず決然となく おなじように かかとを かるく地にめりこませながら 歩をすすめている。

よにん ろくにん
よにん しちにん
はちにん よにん
正確に数えるわけでもない かれらと同調する歩幅とおなじ拍子でくりかえしくりかえす声が いつしか節になり よそごとのように ブラウン管の裏手 柔毛(にこげ)に放射された光のように 表面一枚へだてて距離を詰めることができない。みそなわし みそなえて 。おもてとひょう 面」

そういえば青い縞のパジャマの横並ぶすがたがいつかどこか此処ではない彼処(かしこ)ど処かで見た絶滅収容所へ向かう囚人たちの列に似ていたのかもしれない。せんせえ!に告げると満たされぬ こころの飢ゑとロマンティクな修辞もて笑い飛ばされるのがおちてところか。ふん!どこ何いずこ」 ふんとくそ」

かもしれぬ。かもしれる。かもしれた。劣性遺伝子裂性の列列列........。 ...列たて横列たてひとたび
しかるべき薬品スポイド一滴たらすと そこからまたたくまにアメーバ様のしみほのほとひろがりとろんとろんとろけて坂をころがりおちていくのであつた。
一坤の賽神のひとこえのようにかたぶけるかたぶきに みなとけるみのうえ。 縦立て楯 よ」

(.....やく たれか 
(たれか がみをてろおてくれるか
(がみを
(な がみを
(わ がみを
(  わがいを
(     わああいいを........

...おてくれるか? と イントネーションで判る 懇願でなく きつい命令でなく 切なる請願でなく 要請でなく ....

彼がみをのぞきこんで しかばねきけん/ここより落つるな の看板をわらって みおろしとる。たれも落ちたくて落つるものなどいやせんにて。さきから しかばねになろうかばねは おるなかねて。ふぜんにて いっつのまにか さきほどのれつびとららがぐるりとわになてはねばねを

構成しておるのがみえとおる ずら がらっとみわたすと じぃ っちょうっこうつとみてふよ。


...それはおとろしいまなざしで

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