2019年12月12日木曜日

さ・迷う

まちなかで迷うのはなにかとたやすい
どこへ向いているのかわからなくても
いま向いている方向へどんどん歩くと
いずれ幹線道路か交差点や線路や駅や
大きなビルやショッピングセンターや
公共施設や団地工場河川寺社のたぐい
とにかく徴になるところにぶちあたる
そこでじぶんの位置を確かめればよい
歩く時間を惜しむのならしかたないが
杳い山の深い森の奥へ迷い入ることも
おなじ場所を堂々めぐりめぐることも
可能性は尠いのだから気楽に歩くのだ

通行人をつかまえてわたしはどちらへ
向かってあるいていますかとたずねて
みるのもよいしバスの標識を見るのも
よい適当にバスに乗ってみるのもよい
飛んでもないところに連れていかれた
ところでせいぜいまちのはずれの車庫
ぐらいなものバス会社が此の世の外か
ら乗り入れているなんてことはないの
だから安心していてよろしそりゃいち
ばん確かなのはタクシーを拾うことだ
けどお金もかかるしつまんないじゃな
い?ゆっくりさ迷いたい気持ちと早く
目的地に着きたい焦りどこへ着くのだ
ろうかという不安と夢想どこへも着か
ないかもしれないという宙づりどこか
へは着くだろうという根拠の無い楽観

道傍に花があって
脇に鳥がいて
子供が遊んでいて
粗大ゴミがころがっていても
目もくれないでもいいし
目くばせをくれてもいい
美いものがとおりかかっても
みにくいものがたちさわいでも
目をとめてもいいし
目をふせてもいい
だれかと喋ってもいいし
独りで呟いてもいい
音楽を聴くのもいい
本をみるのもいい
車がくれば避ければいい
ひったくりに遭えば叫べばいい

雨が降っても
夜になっても
おなかがすいても
おしっこがしたくなっても
悠悠となにもしないでもいいし
慌ててコンビニを捜すのもいい
喫茶店にはいるのもいい
誰かに電話するのもいい

ただ道をいそぐ
ただ未知を急く
ただのうごきに
なってもいいし
止まるのもよい
やめるのもよい
やめぬのもよい
引き返すもよし
やり直すもよし
終りはなくても
終りがあつても
嘉いではないか

寓話でなく
具象の街を
歩きたまへ
迷ひたまへ

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