2019年6月12日水曜日

わたしはたわし

オレが一人称オレなのは、わたしという一人称が嫌いだからだ。
わたしは、わたしは、を連呼する女をみると、たわしは、たわしは、に
きこえてくる。
そのうち、たわしあたまの、棒のようなからだつきの女が、みえてくる。
さけぶたわしの、まんなかあたりがどうにもいやらしくて 卑猥でさ。
茶色く ぴんぴんびっしり生えた毛がビーバー(もちろん隠語)を思い出させる。

ああ、でも たわしにまですら至らなくて幼児みたいに自分の下の名を自分の一人称にする女なんて論外だぜ。
どういうわけかそういうのにかぎって意気がってたりするのもいるけどああいうのはオレたちの部族ではない。
部族ではない。
誇り高きオレたちの。

ハルの一人称は、世間的には「わたし」だと思われているだろうが、「た」と「し」のあいだにかろうじて聞こえるか聞こえないかの風情で ちいさな「く」がはさまっている。
だから「わたし」ではなく「私」なのだ。
生まれついての(かどうかは知らんがそう思わせる)エレガンスでさ。なにか優雅で 高貴な カンジでさ あの「私」の発音はハルにしかできない。
ハルが男であったときから知っている。
ハルが男でいてくれたらよかったのにな。
大好きだし。
でも、きっと手は出せなかっただろうな。
オレにだって、手を出していい相手と そうでない相手はわかる。
ハルは、大事だから終始手は出せなかった。きっとこれからもずっと。

わたしわたし、たわしたわし、を連発する女の代表格が ペコだけど
あいつだけはまあ許しておく。
わたしわたしわたしを連発しないといけないほどのひ弱な人格があって
あいつはそれを奪われたらどうなってしまうかわからない。
でも じつは だれも ペコの 「わたし」 になんて 興味ない。
あいつはそれがわかってない。いや薄々わかっていながら、目をつぶっている。
だから、ちょっと、ほっとけないところがあってさ。
ホントはあんなタイプの女は大嫌いなんだけどさ。オレの裏人格みたいで
ほっとけないのさ。
誰とでも寝る女と 誰とも寝ない女
という裏ではないよ。念の為。

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