2019年6月3日月曜日

いつかまた移動をはじめる日まで




…ではないものを
のみこむ

…ではないものをのみこんだやさきに
ささと
ささや
ささやか
ささくれ


くれだつ
…てのものが
ある

ささやかれ
かれ
かれ なる


の身体
を のみこむ



飲み込んだ瞬間を覚えている。記憶というより記銘というべきか。
それはJLG氏がみずから監督した映画のなかで黒い衣装に身をつつみ
みずうみのそばで如何にも映画的な道化師然として身軽な跳躍をみせていた、
その動きに反応してあてさきのないaimerのゆくえにmisfitな想いがあられもなくみそびれていくのを自覚したみぎりだったのかもしれない。

みずいろ

そのまえに
まずアンバー。
アンバーをダークに溶く
次第にダークに
底辺にはチャコールグレーをすこし毛羽だたせ
黒いシルエットとの境界線はくっきり
うえのほうは光色の黄を刷き
うっすらなでしこ
それから
灰色のまじったみずいろ。
みずいろ
みずいろはだんだん
上方にむかってだんだんインディゴブルーに
深くなる。

そのスキマに
ふいに鏡面が割りこむ。
白く白いハイライトを点々と置いてゆきながら
ゆれるチャコール
ゆれるアンバー
ゆれる黄
ゆれる水色
そしてインディゴ
そのつどあたらしい
波うつ水面
またふいに消え去る。

「うし」というコトバがこないだから肩胛骨の内側あたりに滞留している。
かたく確実な質量をもちおもく輪郭をもってそこに居住しているが
ちっとも不快ではない。
くくくくくく・・・とふくみわらいがもれそうな諧謔とメランコリーを帯びて
「うし」
「うし」
と自ら発音される
「うし」は
いまにも腿の前面あたりに第2の出張所を
ヒップのえくぼのあたりに第3の出張所をつくって
子分たちを送り出しそうな勢いである。
暴力団的に自動的に描かれるポートレートに「うし」という瘤が複数で不法滞在する。
あちこちで勝手に
「うし」
「うし」と
自ら発声する。
いつか移動する日まで
そしてまたふいに現前する
アンバーと黄のひかりとブルーとは
あおじろく放電する一定の厚みをもった狭めの肩と
くろく繊いくるぶしと
スローハンド早撃ちする恐怖のまなざしをそなえて
ひとをその場に凍らせたあげく
まったく不似合いな優しいコトバをくちにする。
目的語をとらない「愛する」
そういえば
フランス語の動詞の変化はまずこれで学ぶのである。
目的語をとらない「愛する」
日本語にはないコトバ
きのうはもっとのんびりしてて
「ひとはひとをいとおしくおもうものである」
という述懐のうらに
きょうは
「だれからものぞまれないひと」
があって
ひとりでにうごきだす。
かってに移動をはじめる

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