ときどき「医者は患者の命(利益)を最優先する(べきだ)」と信じているひとがいてびっくりすることがある。医者は人間の命を救うことを第一の目標/動機に仕事をしていることを信じているし、そうでない医者は医者失格だとでも思っている。
そうじゃないことは実際に医者と接していればすぐわかる。(もちろん辺境の医者や町医者と専門性の高い医者とではそれぞれありようが異なるだろうけど)。医者はそれぞれの専門によって異なるそれぞれのプロフェッショナリズムの内部に第一の動機も目標も、また矜恃も持っている。「患者の命」とか患者の利益とかはそれじたいを目標とするものではなく、医者が医者としての最善を尽くしたあとから結果的についてくるといったところだろう。(たとえば災害や紛争など究極の条件下にあって目の前の命を救わなければといった切迫した場面にあってさえ、そのとき医者の考えることは「自分に何ができるか」であって「どんな手段を使ってでも(極端にいえば自分の命を投げうってでも)この人を救いたい」ではないだろう。)
もちろん医者が医者という職業を志した最初の動機に「人の命を救いたい」「人に奉仕したい」という心があるだろうことは否定しない。あらゆる「奉仕(サーヴィス)」業の根っこにはそれがあるだろうから。しかし、その動機から職業(プロフェッショナル)として「医師」を選択した時点で、そして「医師」として立派に一人立ちしたときから、その人は、ただただ盲目的に人に奉仕するだけの者ではなく、一人のプロになっていますぜ。
そして、そのことはちっとも悪いことではない。オートバイを作るのがものすごく好きなホンダさんという人がいて、そのひとは消費者の存在なんて意に介さず、ひたすら自分の気に入る良いオートバイを作りたいと念じて製作に励む。そのひとが創造力に優れていて、また運が良ければ、これまで世に阿るようにつくられてきた製品とは格段に異なる画期的な製品が生まれるだろう。消費者はそのひとたちのプロとしての仕事から、自分にとって利益になる部分を都合良くもらってくればいいだけの話である。
オートバイづくりとはちがって医者の仕事は患者の身体という場をフィールドにしているし、医療にかぎらずサーヴィス業というのは消費者それぞれについて商品であるサーヴィスの内容が異なって当然でもあるし、医者と患者が少しずつ接触を重ねつつ、それぞれの要求や利害をすりあわせつつ、少しずつ微調整を繰り返しながら、実際の医療サーヴィスは遂行されていくものなんだろう。
大勢の患者が集まる病院では、一人ひとりの患者の利益を最優先することなど不可能だから、それこそ調整が必要で、どこまで自分の都合を押し通すのか、どこまでの不都合を受け容れるのか、わがままと言われるのを恐れずにどんどん要求したほうがいいみたい。単に病院の都合で不都合を強いられているのに、「これは先生(医者)がわたし/あなた(患者)のことを考えてくれてこのようにしてくれているのよ」「わたし/あなた(患者)には理解できないところもあるけどきっとこれが最善の道なのよ」とかわざわざ医者/病院の都合の良いように考えてあげる(たぶん患者の不安をのぞいてあげるための善意でもあるんだろうけど)ひとなどを見ていると、意地悪なわたしは横から口を挟んで「ちがいますよ」と冷たく言ってやりたくなるのだが(笑)、患者の気持ちを考えるとそんなこと言っちゃいけないんでしょね。どうも患者同士のなぐさめあい、周りの近親者が患者をなだめるために口々に言うことなどは、この種の欺瞞に満ちていて気にくわない。
患者と医者と(また病院と)利害がはっきり対立したり思惑がずれたりすることは当然のことなのであって、医者は「わたしはあなた(患者)のことを第一に考えてるんですよ」などと嘘をつくべきではないし、患者の側も「全幅の信頼」なんて医者に押しつけるべきではないだろう。いまだにびっくりするほどナイーブな人がいて、「先生のおっしゃることにまちがいはないから…」「先生がわたしにとって最善の道を勧めてくださるから…」と信じている患者とか、ろくに説明もせず(インフォームドコンセントをなおざりにして)「君は何も心配しなくていいから」「安心してわたしに任せていればいいから」とのたまう“名医”とかがいるらしい。そんな名医に全幅の信頼とやらを預けてそれが裏切られればなにもかもチャラのように言うひともいるが、そもそもそんな“信頼”があるかのように振る舞うほうがまちがっている。必要なコミュニケーションをせず、お互いに勝手な幻想を抱いてそれぞれが自分の都合の良いように考えているだけの信頼なんてもとから信頼じゃないぜ。
あらかじめ「各々の利害は異なる」という互いの了解があってこそ、きちんとコミュニケーションができる。互いの立場や条件、それぞれの意思を確認し、そのうえで、いろんな調整も関係も契約もできていくわけなんだから。そのコミュニケーションのベースになるのが、誠実であるとか、正直であるとか、互いを思いやることができるとか、そういう人間性への信頼ではないのかね。
2019年12月22日日曜日
2019年12月12日木曜日
さ・迷う
まちなかで迷うのはなにかとたやすい
どこへ向いているのかわからなくても
いま向いている方向へどんどん歩くと
いずれ幹線道路か交差点や線路や駅や
大きなビルやショッピングセンターや
公共施設や団地工場河川寺社のたぐい
とにかく徴になるところにぶちあたる
そこでじぶんの位置を確かめればよい
歩く時間を惜しむのならしかたないが
杳い山の深い森の奥へ迷い入ることも
おなじ場所を堂々めぐりめぐることも
可能性は尠いのだから気楽に歩くのだ
通行人をつかまえてわたしはどちらへ
向かってあるいていますかとたずねて
みるのもよいしバスの標識を見るのも
よい適当にバスに乗ってみるのもよい
飛んでもないところに連れていかれた
ところでせいぜいまちのはずれの車庫
ぐらいなものバス会社が此の世の外か
ら乗り入れているなんてことはないの
だから安心していてよろしそりゃいち
ばん確かなのはタクシーを拾うことだ
けどお金もかかるしつまんないじゃな
い?ゆっくりさ迷いたい気持ちと早く
目的地に着きたい焦りどこへ着くのだ
ろうかという不安と夢想どこへも着か
ないかもしれないという宙づりどこか
へは着くだろうという根拠の無い楽観
道傍に花があって
脇に鳥がいて
子供が遊んでいて
粗大ゴミがころがっていても
目もくれないでもいいし
目くばせをくれてもいい
美いものがとおりかかっても
みにくいものがたちさわいでも
目をとめてもいいし
目をふせてもいい
だれかと喋ってもいいし
独りで呟いてもいい
音楽を聴くのもいい
本をみるのもいい
車がくれば避ければいい
ひったくりに遭えば叫べばいい
雨が降っても
夜になっても
おなかがすいても
おしっこがしたくなっても
悠悠となにもしないでもいいし
慌ててコンビニを捜すのもいい
喫茶店にはいるのもいい
誰かに電話するのもいい
ただ道をいそぐ
ただ未知を急く
ただのうごきに
なってもいいし
止まるのもよい
やめるのもよい
やめぬのもよい
引き返すもよし
やり直すもよし
終りはなくても
終りがあつても
嘉いではないか
寓話でなく
具象の街を
歩きたまへ
迷ひたまへ
どこへ向いているのかわからなくても
いま向いている方向へどんどん歩くと
いずれ幹線道路か交差点や線路や駅や
大きなビルやショッピングセンターや
公共施設や団地工場河川寺社のたぐい
とにかく徴になるところにぶちあたる
そこでじぶんの位置を確かめればよい
歩く時間を惜しむのならしかたないが
杳い山の深い森の奥へ迷い入ることも
おなじ場所を堂々めぐりめぐることも
可能性は尠いのだから気楽に歩くのだ
通行人をつかまえてわたしはどちらへ
向かってあるいていますかとたずねて
みるのもよいしバスの標識を見るのも
よい適当にバスに乗ってみるのもよい
飛んでもないところに連れていかれた
ところでせいぜいまちのはずれの車庫
ぐらいなものバス会社が此の世の外か
ら乗り入れているなんてことはないの
だから安心していてよろしそりゃいち
ばん確かなのはタクシーを拾うことだ
けどお金もかかるしつまんないじゃな
い?ゆっくりさ迷いたい気持ちと早く
目的地に着きたい焦りどこへ着くのだ
ろうかという不安と夢想どこへも着か
ないかもしれないという宙づりどこか
へは着くだろうという根拠の無い楽観
道傍に花があって
脇に鳥がいて
子供が遊んでいて
粗大ゴミがころがっていても
目もくれないでもいいし
目くばせをくれてもいい
美いものがとおりかかっても
みにくいものがたちさわいでも
目をとめてもいいし
目をふせてもいい
だれかと喋ってもいいし
独りで呟いてもいい
音楽を聴くのもいい
本をみるのもいい
車がくれば避ければいい
ひったくりに遭えば叫べばいい
雨が降っても
夜になっても
おなかがすいても
おしっこがしたくなっても
悠悠となにもしないでもいいし
慌ててコンビニを捜すのもいい
喫茶店にはいるのもいい
誰かに電話するのもいい
ただ道をいそぐ
ただ未知を急く
ただのうごきに
なってもいいし
止まるのもよい
やめるのもよい
やめぬのもよい
引き返すもよし
やり直すもよし
終りはなくても
終りがあつても
嘉いではないか
寓話でなく
具象の街を
歩きたまへ
迷ひたまへ
2019年12月7日土曜日
かたつむりのおはなし(Go Go Slow)
かたつむりのしっぽ
かたつむりのしっぱい
かたつむりのつめ
かたつむりの鉄道
かたつむりの航海
かたつむりの後悔
かたつむりの軌跡
かたつむりの刑務所
かたつむりの保釈金
かたつむりの嘆き
かたつむりのバケツ
かたつむりの聖杯
聖なる欲望を
享けるさかづき。塩化ヴィニルよりも地球に優しいという(嘘の噂の)ポリエチレンテレフタートのシートをこまかい四辺形に切り分け、地下鉄の背後の壁にぺたぺたと隙間なく貼り付けていく
君の
不可思議な動機。
じつは世界はそれほど奥行きなく厚みなくぺらぺらの乾いたモザイクの書き割りなのだが、ポリエチレンテレフタートにお手紙を持たせておつかいにやるそこには誰かいるのかそこにはストロークを要求するべつのポリエチレンテレフタートのモザイクの貼りついた阿呆がいて船酔いブレイクダウンの指示を出す
某の
みえすいた忖度。
やはり陽気な電子が陰気な電子の振る舞いを拒絶するかのように
跋扈する跛行する跛の(差別用語をのこらず排斥した辞書の)
舞い舞い
でんでん
無視する
片目
隻眼の
かたつむりのヴェール
かたつむりのビール
かたつむりの梱包
かたつむりの販売
かたつむりの谷間
かたつむりのそよ風
かたつむりのおはなし
かたつむりのおすそわけ
おそく
おそく
かたつむりのおてがみで頂戴ナ。
かたつむりのおさそいはとどかないから。
かたつむりのしっぱい
かたつむりのつめ
かたつむりの鉄道
かたつむりの航海
かたつむりの後悔
かたつむりの軌跡
かたつむりの刑務所
かたつむりの保釈金
かたつむりの嘆き
かたつむりのバケツ
かたつむりの聖杯
聖なる欲望を
享けるさかづき。塩化ヴィニルよりも地球に優しいという(嘘の噂の)ポリエチレンテレフタートのシートをこまかい四辺形に切り分け、地下鉄の背後の壁にぺたぺたと隙間なく貼り付けていく
君の
不可思議な動機。
じつは世界はそれほど奥行きなく厚みなくぺらぺらの乾いたモザイクの書き割りなのだが、ポリエチレンテレフタートにお手紙を持たせておつかいにやるそこには誰かいるのかそこにはストロークを要求するべつのポリエチレンテレフタートのモザイクの貼りついた阿呆がいて船酔いブレイクダウンの指示を出す
某の
みえすいた忖度。
やはり陽気な電子が陰気な電子の振る舞いを拒絶するかのように
跋扈する跛行する跛の(差別用語をのこらず排斥した辞書の)
舞い舞い
でんでん
無視する
片目
隻眼の
かたつむりのヴェール
かたつむりのビール
かたつむりの梱包
かたつむりの販売
かたつむりの谷間
かたつむりのそよ風
かたつむりのおはなし
かたつむりのおすそわけ
おそく
おそく
かたつむりのおてがみで頂戴ナ。
かたつむりのおさそいはとどかないから。
2019年12月4日水曜日
セカンド・オピニオン
で、いろいろ信頼できる方々から忠告をいただいたり本を読んだりした末、最初に診察を受けた総合病院とはべつに2つの病院に行って、セカンドオピニオン、サードオピニオンを得ることができた。(最初に行った病院には断らなかったし検査データも持っていかずエコーだけは改めてやったから、厳密にはそう言えないかもしれないけど)。当時の焦点は乳房温存療法ができるかどうかで、最初の医師の見解はステージ( I の最終あたり)と腫瘍の大きさはともかく位置が乳首に近いから無理とのこと。2番目に会いに行った医師は当時関西でこの分野で権威とされていた人で(というわけかtarahineのエコー映像を3人の若い医師から背後で見つめられつつ先生の解説を聞く羽目になったが)、「抗癌剤でまず癌を小さくしてから手術する」という手を提案された。ここがまた思案のしどころで、いろいろ調べるうちtarahineは抗癌剤という治療法はそもそもあかんのではないかという個人的見解を得つつあったのである。あんなもん、そりゃー癌を叩くかもしれないが、同時にからだ全体を痛めつけてしまうやん。癌患者ってむしろそれで弱ってるんとちゃん?それにそのうち抗癌剤に耐性を持ちはじめるんだから結局治療効果というより延命効果しかないんちゃん?(すべてtarahineの個人的見解です。安易に同調しないようにね)。それもあって躊躇したのだが、そもそもtarahineには内分泌系の持病があることをお話ししたところ、「だとしたら、やらない方がいいですね」と。それでもうほぼ方針決定。3番目に会いに行った医師もほぼほぼ同じ意見で結局最初の総合病院に戻ることになった。(後々そこで知り合った・・途中で最初の主治医からバトンタッチした・・乳腺専門の医師が現在もtarahineの主治医になっている。)
ところでその2番目に会いに行った「その分野の権威」の先生だけど、初診予約は普通に取れた(特に誰かの紹介がなければということではなかった)し、「先生のご執刀で手術していただくことは可能ですか?」と尋ねたところ「いついつならいいですよ」とスケジュールを示してくれた(いくらお金を積まないと無理みたいなことはなかった)。それがやっぱりかなり先になるので、最初の病院に戻ったけれど、世上言われているより医学界は情実とかに左右されるということはないようだとわかった次第。
ところでその2番目に会いに行った「その分野の権威」の先生だけど、初診予約は普通に取れた(特に誰かの紹介がなければということではなかった)し、「先生のご執刀で手術していただくことは可能ですか?」と尋ねたところ「いついつならいいですよ」とスケジュールを示してくれた(いくらお金を積まないと無理みたいなことはなかった)。それがやっぱりかなり先になるので、最初の病院に戻ったけれど、世上言われているより医学界は情実とかに左右されるということはないようだとわかった次第。
2019年12月3日火曜日
ネガティヴ・キャンペーン
ただ、まあ、「覚悟しといてな」の一言でひとつ安心したことがある。tarahineが疑心暗鬼に思ってたのが、自分がもし癌に罹ったとして、家族と一緒に来いとか言われて、家族にだけは本当のことを言われ、本人には癌であることを隠されたりしたらどうしようかと。まあ、インフォームド・コンセントが行き渡った今では考えられないけど(一部にはまだそういうのも残ってるらしいけど)、本人だけ自分が癌であることを知らぬまま(家族や周囲は知っていて)そのまま死ぬなんて最悪だと。どうであれなんであれ本人にちゃんと真実を告げてほしいというのがtarahineの意向で、それはどうやら通りそうなのだった。で、実際、家族を連れてったのは手術当日のみで、あとは全てひとりで行って決めた。医師も本人にズバリ告知(言葉を飾ったり婉曲に言ったりはしなかった)、本人の責任で治療方針を決定、という流れになった。
もひとつ告知直後の鬱になる暇のなかった要因には、「病院行こ」と決めた日から、あらゆる情報を(ネット情報も図書館情報も)調べまくり、病院で正式に告知されてからは、当時やってたMLの仲間をはじめ、信頼できる人(というか、ハッキリ言えばこういう場合に役に立ってくれる人/利用できる人)にすべて打ち明け、いろいろアドバイスを受けたこと。先行して自分でいろいろ調べてたこともあってリテラシーはそれなりにできていて、その当時でいえば茸の類(たぐい)とか蜂の巣の類とか胡散臭い情報には耳を傾けない鉄壁の構えができてたのも大きかったかな。頭の良い友人のなかにも(コレは非科学的だから胡散臭いとかコレは科学的で信頼できそうとか区別せず)「良いと言われているものはなんでも試してみれば?」と言ってくれた人や、自分の親族が末期癌でなにやらその類のものを摂取せられて回復せられた由を懇々と語られた方もあったけど、惑わされずに済んだ。べつに試してみてなにも効かなかったらそれでもいいやん、プラシーボでも効けばまたいいやん、不安を慰める気休めにもなるやん・・とか思う人もいるかもしれないけど、tarahineは持ち前の正義感からそういう業者を悪徳(癌患者の不安につけこんで詐欺商法で儲ける)と決めつけ、許せないの。自分が利用するどころかネガティヴ・キャンペーンを張りたいところだったわ・・。
もひとつ告知直後の鬱になる暇のなかった要因には、「病院行こ」と決めた日から、あらゆる情報を(ネット情報も図書館情報も)調べまくり、病院で正式に告知されてからは、当時やってたMLの仲間をはじめ、信頼できる人(というか、ハッキリ言えばこういう場合に役に立ってくれる人/利用できる人)にすべて打ち明け、いろいろアドバイスを受けたこと。先行して自分でいろいろ調べてたこともあってリテラシーはそれなりにできていて、その当時でいえば茸の類(たぐい)とか蜂の巣の類とか胡散臭い情報には耳を傾けない鉄壁の構えができてたのも大きかったかな。頭の良い友人のなかにも(コレは非科学的だから胡散臭いとかコレは科学的で信頼できそうとか区別せず)「良いと言われているものはなんでも試してみれば?」と言ってくれた人や、自分の親族が末期癌でなにやらその類のものを摂取せられて回復せられた由を懇々と語られた方もあったけど、惑わされずに済んだ。べつに試してみてなにも効かなかったらそれでもいいやん、プラシーボでも効けばまたいいやん、不安を慰める気休めにもなるやん・・とか思う人もいるかもしれないけど、tarahineは持ち前の正義感からそういう業者を悪徳(癌患者の不安につけこんで詐欺商法で儲ける)と決めつけ、許せないの。自分が利用するどころかネガティヴ・キャンペーンを張りたいところだったわ・・。
2019年12月1日日曜日
劣性遺伝子
左足のかかとがほんのすこし深めに砂にめりこむようなリズムでそのうしろすがたはゆったりとあしをはこぶのである。きびすとかかと きびすとかかと」
頭蓋骨のかたちが うしろからみているだけで 掌ての ひらで覆いつつめるがごとくさわっているような感触あってよくわかる うしろあたまが微妙にがくがくゆれて ぼんのくぼが宙にうかぶ 吹く あそび球のようにぷくぷくへこんだり膨らんだり浮かんだり沈んだりするようにみ 。細めの肩から流れ落ちる背中の大儀そうに めにみえぬ空気のふとんの層いちまいしょって腰のあたりでひといきれ ほっと
ぽっとくぼむまでに長いこと。そらとちゅう 宙とそら」
ゆるゆるとつっとりもっとり ......... かれの吐き出していることばことば断片ごとに引き伸ばされて、ぷーくぷーくふきだしの泡に包まれて頭上の空に消えていく。そらとくう 腔とそら」
。。。そらにあいた 孔
(わがみがくるしか
(おのれがつらか
( なかなか
(いかさま
(うとかもん
(とつ おいつ
ふっと気づくと
そういうひとが左にまたひとり
右にふたり さんにん
左にまた よにん
ごにん ろくにん ....................
と殖えて みな いちように ほそい肩をして
らんぼうに虎刈りにされた まるい頭蓋をして
背の高い低いはあっても どうように つるんと肉の乗っていない皮膚だけの背中をして おとこかおんなか判らず
判然とせず決然となく おなじように かかとを かるく地にめりこませながら 歩をすすめている。
よにん ろくにん
よにん しちにん
はちにん よにん
正確に数えるわけでもない かれらと同調する歩幅とおなじ拍子でくりかえしくりかえす声が いつしか節になり よそごとのように ブラウン管の裏手 柔毛(にこげ)に放射された光のように 表面一枚へだてて距離を詰めることができない。みそなわし みそなえて 。おもてとひょう 面」
そういえば青い縞のパジャマの横並ぶすがたがいつかどこか此処ではない彼処(かしこ)ど処かで見た絶滅収容所へ向かう囚人たちの列に似ていたのかもしれない。せんせえ!に告げると満たされぬ こころの飢ゑとロマンティクな修辞もて笑い飛ばされるのがおちてところか。ふん!どこ何いずこ」 ふんとくそ」
かもしれぬ。かもしれる。かもしれた。劣性遺伝子裂性の列列列........。 ...列たて横列たてひとたび
しかるべき薬品スポイド一滴たらすと そこからまたたくまにアメーバ様のしみほのほとひろがりとろんとろんとろけて坂をころがりおちていくのであつた。
一坤の賽神のひとこえのようにかたぶけるかたぶきに みなとけるみのうえ。 縦立て楯 よ」
(.....やく たれか
(たれか がみをてろおてくれるか
(がみを
(な がみを
(わ がみを
( わがいを
( わああいいを........
...おてくれるか? と イントネーションで判る 懇願でなく きつい命令でなく 切なる請願でなく 要請でなく ....
彼がみをのぞきこんで しかばねきけん/ここより落つるな の看板をわらって みおろしとる。たれも落ちたくて落つるものなどいやせんにて。さきから しかばねになろうかばねは おるなかねて。ふぜんにて いっつのまにか さきほどのれつびとららがぐるりとわになてはねばねを
構成しておるのがみえとおる ずら がらっとみわたすと じぃ っちょうっこうつとみてふよ。
...それはおとろしいまなざしで
頭蓋骨のかたちが うしろからみているだけで 掌ての ひらで覆いつつめるがごとくさわっているような感触あってよくわかる うしろあたまが微妙にがくがくゆれて ぼんのくぼが宙にうかぶ 吹く あそび球のようにぷくぷくへこんだり膨らんだり浮かんだり沈んだりするようにみ 。細めの肩から流れ落ちる背中の大儀そうに めにみえぬ空気のふとんの層いちまいしょって腰のあたりでひといきれ ほっと
ぽっとくぼむまでに長いこと。そらとちゅう 宙とそら」
ゆるゆるとつっとりもっとり ......... かれの吐き出していることばことば断片ごとに引き伸ばされて、ぷーくぷーくふきだしの泡に包まれて頭上の空に消えていく。そらとくう 腔とそら」
。。。そらにあいた 孔
(わがみがくるしか
(おのれがつらか
( なかなか
(いかさま
(うとかもん
(とつ おいつ
ふっと気づくと
そういうひとが左にまたひとり
右にふたり さんにん
左にまた よにん
ごにん ろくにん ....................
と殖えて みな いちように ほそい肩をして
らんぼうに虎刈りにされた まるい頭蓋をして
背の高い低いはあっても どうように つるんと肉の乗っていない皮膚だけの背中をして おとこかおんなか判らず
判然とせず決然となく おなじように かかとを かるく地にめりこませながら 歩をすすめている。
よにん ろくにん
よにん しちにん
はちにん よにん
正確に数えるわけでもない かれらと同調する歩幅とおなじ拍子でくりかえしくりかえす声が いつしか節になり よそごとのように ブラウン管の裏手 柔毛(にこげ)に放射された光のように 表面一枚へだてて距離を詰めることができない。みそなわし みそなえて 。おもてとひょう 面」
そういえば青い縞のパジャマの横並ぶすがたがいつかどこか此処ではない彼処(かしこ)ど処かで見た絶滅収容所へ向かう囚人たちの列に似ていたのかもしれない。せんせえ!に告げると満たされぬ こころの飢ゑとロマンティクな修辞もて笑い飛ばされるのがおちてところか。ふん!どこ何いずこ」 ふんとくそ」
かもしれぬ。かもしれる。かもしれた。劣性遺伝子裂性の列列列........。 ...列たて横列たてひとたび
しかるべき薬品スポイド一滴たらすと そこからまたたくまにアメーバ様のしみほのほとひろがりとろんとろんとろけて坂をころがりおちていくのであつた。
一坤の賽神のひとこえのようにかたぶけるかたぶきに みなとけるみのうえ。 縦立て楯 よ」
(.....やく たれか
(たれか がみをてろおてくれるか
(がみを
(な がみを
(わ がみを
( わがいを
( わああいいを........
...おてくれるか? と イントネーションで判る 懇願でなく きつい命令でなく 切なる請願でなく 要請でなく ....
彼がみをのぞきこんで しかばねきけん/ここより落つるな の看板をわらって みおろしとる。たれも落ちたくて落つるものなどいやせんにて。さきから しかばねになろうかばねは おるなかねて。ふぜんにて いっつのまにか さきほどのれつびとららがぐるりとわになてはねばねを
構成しておるのがみえとおる ずら がらっとみわたすと じぃ っちょうっこうつとみてふよ。
...それはおとろしいまなざしで
2019年11月25日月曜日
覚悟しといてな
病気譚というのは「なんだ大したことないやん」と言われるとちょっとムカつく。それなりの重病と思われて「すごく大変なのね〜」といちいち親身になって聞いてくれると嬉しい。だけどそのまま悪化したり死んでしまったりするのは絶対嫌で、結果「だけど克服できてすごかったね」と言われると鼻が高い。・・という我儘なもので、そういうトラップに嵌らないように書きたいものだけど、どうしても現時点でtarahineが生きている以上、手柄話になってしまうな・・。
癌譚も世の中に溢れているけど、ついこないだテレビでやってたのは、告知からしばらくの魔の鬱期みたいな話。癌の告知を受けた人は誰でもまずどどーんと落ち込み、その事実を受け容れるのに時間がかかる。そのあいだ少なからぬ人たちが鬱になる(軽い鬱であれ本格的なものであれ)という話。まあそうでしょう。つい最近もtarahineの友人の親御さんが癌の告知を受けたんだけど、側(はた)から見ればごくごく軽いもので生存率も高いし、ましてや手術の必要もないかもというぐらいで、聞いたtarahineもその親御さんの子であるtarahineの友人も「そんなん平気やん」とのんびりしたものだったけど、告知された当人の取り乱しようといったら半端なかったらしい。「癌」という言葉の響きがまだやっぱり「死病」なのね。
ついこないだテレビでやってたのはもっと重大なケースで、それはどどーんと落ち込んで当然だと思われたけど、tarahineに限って言えば、癌を初発した当時の普段の精神状態があまり良好とは言えず、少しずつ回復傾向にあったとは言え、その前の「軽い鬱」期の名残をまだ引きずっていたゆえに、癌に気づいたことで逆に「目が覚めた」。こんなことやってる(鬱々と毎日を過ごしている)場合ちゃうで!と思ったのでした。もちろんその当時はマンモグラフィ検診なんてものはなく(あったけど有料で高価で今のように何も自覚症状なくても全員受けに行くべしみたいなキャンペーンもなかったし)、いつの頃からか右胸の乳首近くにちょっと引き攣(つ)れるような感覚(べつに痛いわけではなく皮膚がちょっとつれる感じがするだけ)があり、横になって触ってみるとその乳首の側(そば)の奥のほうに何か触れるものがある。(いわゆる「しこり」というやつだけどそれが何者か自分にできてみて初めて知った)。あれ?これっていわゆる癌ってやつ?とちゃんと気づいたのがそれこそ3か月〜半年ぐらい(正確に覚えてない)も経過したあとで(ずいぶん遅かったんです。つまり「早期発見」の原則には全く反してた。)その日の情景はよく覚えている。夜そこに触れつつやっぱ気になるな〜と思って寝て朝目が覚めてから再びその部分に触れながら「あれ?」と初めて思いが至り、そうだ確かめなきゃと思いついて、起きて洗面所の鏡の前に立ち「エイヤっ」っと声あげながら弾みつけてバンザイした。すると見事に右の乳首の側(そば)の皮膚が引き攣れ、その辺りに触れてみて奥に何者か悪いものが隠されているらしいことがはっきりわかった。・・「うっわー」・・絶句。
そしてちょっと笑ったかな。何よこれ?次の瞬間、tarahineは、なんでこんな運命がわたしに降りかかるのよ?と思い、自分が死ぬのかと思い、声あげて泣きたい気分だったけど、むしろ「あかん、こんなことしてる場合やない。一刻も早く動かねば・・」と目を覚まされた感じの方が大きかったな。鬱々と(つまりはなんもせんと引きこもりがちに)日々を暮らしている暇はないぜって。
その場で鏡みながら鏡の中のもうひとりの自分に「すぐ病院行こ」と語りかけ、以前内分泌系の病気でお世話になったことのある総合病院の診察券を用意する。ネットでその病院のウェブページ見て関連する科のいちばん偉いさんが外来初診に出る曜日をチェックする・・と。
で、病院行って診察受け、後日の一連の検査手順をまず確かめて日時を決める。触診の時点でもう医師には経験値あってほぼわかったらしくハッキリとは言わないもののギョロっと大きな眼でtarahineを見据えながら「覚悟しといてな」と正確にその文言を言い渡した。(「癌」とか「腫瘍」とか「悪性新生物」とかいう言葉をハッキリ言わないのは現行の倫理には反しているのか?)。で、検査ももともと予約が詰まってたところに「知らん顔して入れとくか?」とか看護師さんに冗談のように言いながら割り込み予約で早め早めに設定してくれたらしい。その雰囲気からしてもうtarahineも覚悟を決めていた次第。
癌譚も世の中に溢れているけど、ついこないだテレビでやってたのは、告知からしばらくの魔の鬱期みたいな話。癌の告知を受けた人は誰でもまずどどーんと落ち込み、その事実を受け容れるのに時間がかかる。そのあいだ少なからぬ人たちが鬱になる(軽い鬱であれ本格的なものであれ)という話。まあそうでしょう。つい最近もtarahineの友人の親御さんが癌の告知を受けたんだけど、側(はた)から見ればごくごく軽いもので生存率も高いし、ましてや手術の必要もないかもというぐらいで、聞いたtarahineもその親御さんの子であるtarahineの友人も「そんなん平気やん」とのんびりしたものだったけど、告知された当人の取り乱しようといったら半端なかったらしい。「癌」という言葉の響きがまだやっぱり「死病」なのね。
ついこないだテレビでやってたのはもっと重大なケースで、それはどどーんと落ち込んで当然だと思われたけど、tarahineに限って言えば、癌を初発した当時の普段の精神状態があまり良好とは言えず、少しずつ回復傾向にあったとは言え、その前の「軽い鬱」期の名残をまだ引きずっていたゆえに、癌に気づいたことで逆に「目が覚めた」。こんなことやってる(鬱々と毎日を過ごしている)場合ちゃうで!と思ったのでした。もちろんその当時はマンモグラフィ検診なんてものはなく(あったけど有料で高価で今のように何も自覚症状なくても全員受けに行くべしみたいなキャンペーンもなかったし)、いつの頃からか右胸の乳首近くにちょっと引き攣(つ)れるような感覚(べつに痛いわけではなく皮膚がちょっとつれる感じがするだけ)があり、横になって触ってみるとその乳首の側(そば)の奥のほうに何か触れるものがある。(いわゆる「しこり」というやつだけどそれが何者か自分にできてみて初めて知った)。あれ?これっていわゆる癌ってやつ?とちゃんと気づいたのがそれこそ3か月〜半年ぐらい(正確に覚えてない)も経過したあとで(ずいぶん遅かったんです。つまり「早期発見」の原則には全く反してた。)その日の情景はよく覚えている。夜そこに触れつつやっぱ気になるな〜と思って寝て朝目が覚めてから再びその部分に触れながら「あれ?」と初めて思いが至り、そうだ確かめなきゃと思いついて、起きて洗面所の鏡の前に立ち「エイヤっ」っと声あげながら弾みつけてバンザイした。すると見事に右の乳首の側(そば)の皮膚が引き攣れ、その辺りに触れてみて奥に何者か悪いものが隠されているらしいことがはっきりわかった。・・「うっわー」・・絶句。
そしてちょっと笑ったかな。何よこれ?次の瞬間、tarahineは、なんでこんな運命がわたしに降りかかるのよ?と思い、自分が死ぬのかと思い、声あげて泣きたい気分だったけど、むしろ「あかん、こんなことしてる場合やない。一刻も早く動かねば・・」と目を覚まされた感じの方が大きかったな。鬱々と(つまりはなんもせんと引きこもりがちに)日々を暮らしている暇はないぜって。
その場で鏡みながら鏡の中のもうひとりの自分に「すぐ病院行こ」と語りかけ、以前内分泌系の病気でお世話になったことのある総合病院の診察券を用意する。ネットでその病院のウェブページ見て関連する科のいちばん偉いさんが外来初診に出る曜日をチェックする・・と。
で、病院行って診察受け、後日の一連の検査手順をまず確かめて日時を決める。触診の時点でもう医師には経験値あってほぼわかったらしくハッキリとは言わないもののギョロっと大きな眼でtarahineを見据えながら「覚悟しといてな」と正確にその文言を言い渡した。(「癌」とか「腫瘍」とか「悪性新生物」とかいう言葉をハッキリ言わないのは現行の倫理には反しているのか?)。で、検査ももともと予約が詰まってたところに「知らん顔して入れとくか?」とか看護師さんに冗談のように言いながら割り込み予約で早め早めに設定してくれたらしい。その雰囲気からしてもうtarahineも覚悟を決めていた次第。
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